多焦点IOLには、2焦点IOLと3焦点IOLが存在する。あくまで私見だが…2焦点は人を選ぶ印象がある。誰でも、誰もが…その機能を教授できるわけでは無い。また、良く見えるけど…。と機能を教授出来た人ですら、必ずしも手放しで満足されているわけでは無いようだ。

我々が分かっているだけでも…夜間の光はにじんだりぼやけが必ず存在するし、また一般的にはコントラストが必ず落ちると言われている。コントラストが落ち無い2焦点もあるが、光学的には近くが見えない。そうなると何のための多焦点なのか?と疑問が残る。そして、waxy visionの存在。どうしても術前には分からない。未だに術前に選別する術が無いのだ…実に悔しい。

ただ、300眼以上の多焦点IOLを挿入させて頂いた経験から…患者様一人一人にしっかりとヒアリングをして誤解を解き、レンズ特性をしっかりお話して、術後の生活を具体的にイメージさせてあげる事、共有する事が出来れば術後の満足度は必ず上げられるツールだと思う。何かを犠牲にして頂く必要があるが…日常生活の大半を眼鏡無しで送れる。支流は片目づつでタイプの異なる2焦点をヒアリングしながら入れる。とにかく患者様一人一人でオリジナルの組み合わせが存在するのだ。決して、夫婦だからとか知り合いがとか友達が良かった組み合わせがその人に合うとは限らない。幸い人の目は2個存在するために上手く2焦点の欠点を打ち消す事のできるいくつかのノウハウが私には身についてきた。

2焦点にも3焦点にも焦点拡張型レンズという新しい概念のIOLが登場したが…前評判に市場が踊らされた印象は否めない。私もその一人だ。両眼に挿入するには、それなりの覚悟を持って頂く必要があるため症例を選ぶ。片眼に挿入するのは今でもありだとは思う。

3焦点は、現存する最も欠点の少ない多焦点レンズだと言える。老眼治療の最前線だと言える確かな技術だがあまり知られていない。ただし、焦点拡張型の3焦点を両眼に挿入すると近見が弱いため老眼鏡が必要になる可能性が出るため…それは無難しい。焦点拡張型レンズはwaxy visionの報告が無いため…その打開策にはなり得る。自費診療扱いになるため高額な手術費用が掛かるのが唯一の欠点か?…。

保険診療による単焦点マニュアル手術は、これからも支流の組み合わせなんだと思う。来年は、レンティスという2焦点の低加入度レンズが保険で使用できると決まった。患者様に福音となりうるのか?動向を見極める必要があるが、一方で使用するクリニックとしては消費税も上がる時に保険診療代が据え置きで、材料費が一律な現行制度のままでは手放しでは賛成できないのが大半の意見であろう。詳しい内容は割愛する。

技術の発達は、いつの時代も我々に便利という素晴らしい恩恵を与えてくれる。ただし、いつも使い手や使い方が問題となる。肝に命じるべき命題だ。

見え方の質としてだけで比べると単焦点レンズがベストというのは事実だし、疑いようが無い。ただし、全ての人にとって良いわけでは無い…それは白内障の手術後に眼鏡を掛けたくない人には不満足となり得るからだ。眼鏡の煩わしさ、CLの煩雑さは人により感じかたも様々…やはり一概には語れない。逆に長年の眼鏡装用で眼鏡がそのかたの顔の一部となっている人もいる。いきなり手術後に眼鏡が無くなると本人も周りも戸惑う。手術後に自分はどんな生活をしたいのか?送りたいのか?一度きりの白内障手術で真剣に悩んで、自分で選んで頂きたい。その助けや専門的なアドバイスならいくらでもする。

うちが、下之城眼科クリニックが多焦点IOLに力を入れているのは、そんな様々な患者様のニーズに真摯に応えたい思いに他ならない。誰でも自由に選択してもらいたいのだ。レーザー白内障手術は、多焦点IOLのそのプレミアムな機能を永続的に担保する事のできる技術なのだと分かってきた。決して人間によるマニュアル手術では、太刀打ち出来ないレベルの精巧さと断言出来る。

そのため、レーザーを導入した当初、私個人で無しだと勝手に判断していたが、単焦点IOLとレーザー白内障手術の組み合わせも充分にありだと反省してこのブログを、2018年を締めくくりたいと思う。
先進医療特約は2焦点眼内レンズ

下之城眼科クリニック