レーザー白内障手術をもう一度考えてみる
先日、あるレーザー白内障手術希望の患者様の手術をした。詳細情報は伏せるが…外来診察時、一見して難しいと感じた小瞳孔例。
テクニカルな問題で言うと…レーザー白内障手術は最低限の瞳孔径が必要(限界の最小前嚢切開縁は3.9ミリ)となる。極端な散瞳不良例や小瞼裂はレーザー不可となる場合があり、術前に見極める必要がある…。マニュアル手術のみでは、小瞳孔例は大して頭を悩ます因子とはならない。手術時に、ほんの一手間加えるだけで済む。
まさにレーザー不可となりうる可能性のある小瞳孔例であった。また、極端な浅前房例であったため、外来時には急性緑内障発作を医原性に引き起こす可能性を考え、手術当日まで極大散瞳負荷ができない状況。評価をさらに難しくさせた要因だった。
術前検査時に3ミリ程度の散瞳径だった。また虹彩後癒着があるようにも見えた。
主役である白内障は前嚢下混濁もあり核硬化がすすんだ成熟白内障。そのための浅前房化。いわゆるホワイト白内障ではなくカチカチで後嚢側がべったり癒着してそうなタイプ。術前に眼底が見えない。術者なら誰しも気が重くなる…。
更に…斜視があり眼位も定まらない。
難症例手術に臨む時…トータルマメージメントをして臨むようにしている。難しいものは、誰がやっても難しい…。では、逆に患者様の良いところを見つけて相殺をしようと考える。
患者様の理解力が良い(キャラが良い)…ムンテラしていて信頼関係を育めたのは大きかった。瞼裂幅は充分広くPIセッティングは難しくない。そして何より…レーザー手術を所望されたのはありがたい限りだった。
あまり一般には知られていないが…難症例と言われる白内障手術ほどレーザー手術の恩恵を受けられる。私が経験した300例あまりの中だけでもそう言い切れる。確実に助けられたのだ。
極端な浅前房例、高度近視眼、チン小帯脆弱例、若年例の前嚢下白内障で繊維化しているタイプ、高齢者の核硬化例や逆にホワイト白内障(成熟白内障)例…いわゆる同じ白内障手術としてカテゴライズされるが、術者なら難症例になりそうで、少し嫌だなと感じる要素を含んだ白内障。レーザー手術を併用すると、いつも通りの安全に手術を遂行出来るレベルにまで引き下げてくれる。また正確無比というメリットまで付いてくる。ストレスが激減するのだ。
白内障手術の中で一番難しく、正確性が求められる工程を最新のレーザーテクノロジーが手助けしてくれる。手術がより簡単により正確になる…当たり前の事だが、あまり知られていない。
また、この頃よく考える…手術早期ならマニュアル手術とレーザー白内障手術の術後の見え方に差は無いと言えるが、はたして5年、10年、20年以上先の見え方にまで差は無いとは言えないのでは無いか…と。
前嚢収縮という現象は術後必ず起こる。前嚢収縮が起きてきた時に…正確無比な前嚢切開をレーザーで作成しておけば、レンズ変位やチン小帯断裂を2次的には引き起こさないはずだ。この事が、一番患者様には大切で、一番差が出てくる要因では無いかと思っている。長期予後の事も手術時に考慮対象として含まれるべき、評価されるべきだと思う。無論、全ての患者様に当てはまるものでは無いが…誰が術前に正確に判断、選別できるのか?誰も出来ない。
レーザー白内障手術を導入して…日々様々な事に気づかされているが、ネガティブデーターは無い。多焦点眼内レンズを本格的に扱うようになり、日々反省と日々勉強の毎日。まだまだ悩みは尽きない。今後も新たなレンズが登場してくる…利益相反無しで、自分の生の声を患者様に届けていきたい。
レーザー技術は、白内障手術をより安全、より正確にしただけでなく…患者様の長期予後まで配慮した技術である事。そこに重きを置けば…お金には変えられない秀逸な技術だと言える。また難症例ほど受けて頂きたい技術である。『本当にマニュアルで良いんですか?』喉元まで出かかり言えずに終わる…せめて、うちでは選択してもらったんだと自分を慰める。
全例に無条件でレーザーテクノロジーが使用できるような社会に成れば良いのにと思わずにはいられない…。